障害年金とは?対象になる条件や仕組みを解説(その2)|吉祥寺の精神科 あすを生きるメンタルクリニック
前回から3回に分けて障害年金についてご説明しています。前回は「対象になる条件や仕組みを解説(その1)」でした。今回は「対象になる条件や仕組みを解説(その2)」です。
障害年金の対象になりにくい精神疾患はある?
「精神科へ通っているなら、どんな診断名でも障害年金の対象になるの?」
と疑問を持つ方も少なくありません。
結論からいうと、精神疾患だから一律に対象になるわけではありません。
障害年金では診断名だけで判断されるのではなく、
・どれくらい日常生活に支障があるか
・どの程度、継続した支援や配慮が必要か
・症状がどれくらい安定しているか
といった生活への影響が重視されます。
そのうえで、精神疾患の中には、認定基準上、原則として対象になりにくいとされているものがあります。
■ 神経症
代表的なものとして、
・パニック障害
・社交不安障害
・強迫性障害(強迫症)
・不安障害全般
・適応障害
などがあります。
これらは、障害年金の認定基準上、原則として認定対象外とされています。
ただし、これは「症状が軽い」「つらくない」という意味ではありません。
認定基準では、こうした疾患は、
「本人が症状をある程度認識でき、治療や環境調整によって改善の可能性がある」
と考えられているためです。
そのため、つらくても対象外になることがあるというのが実際のところです。
一方で、例外的に認定対象となるケースもあります。例えば、
・現実感が乏しくなる
・強い抑うつ状態で日常生活がほぼ成り立たない
・統合失調症やうつ病に近い精神症状がある
・判断力が大きく低下している
・対人交流や生活維持が著しく困難になっている
など、精神病水準の状態がみられる場合です。
このような場合は、統合失調症やうつ病、双極性障害に準じて認定対象となることがあります。
その際は、診断書へ「精神病の病態を示している」ことを記載してもらうことが重要になる場合があります。
■ パーソナリティ障害(人格障害)
各種パーソナリティ障害も、原則として認定対象になりにくいとされています。
ただし、これは「性格の問題」という意味ではありません。
考え方や感情のコントロール、対人関係のパターンに強い偏りがあり、それによって本人が大きく苦しみ、生活維持が難しくなっている状態です。
例えば、
・対人関係が極端に不安定
・感情の波が激しい
・強い衝動性がある
・自傷行為を繰り返す
・見捨てられ不安が非常に強い
などがみられることがあります。
特に、境界性パーソナリティ障害では、
・抑うつ状態が強い
・希死念慮や自傷が続いている
・現実検討力が不安定
・生活全体が著しく崩れている
といった状態になることもあります。
このように、統合失調症やうつ病に近い精神症状が強くみられる場合には、障害年金の対象として認定される可能性があります。
手帳の等級と障害年金は別制度
ここは非常に誤解されやすい部分です。
精神障害者保健福祉手帳と障害年金は、まったく別の制度です。
そのため、
・手帳3級+障害年金2級
・手帳2級だが障害年金は対象外
・手帳なしだが障害年金を受給している
ということもあります。
それぞれ目的や認定基準が異なるため、
「手帳が○級だから障害年金も○級」
とは限りません。
手帳の等級ごとの違いについては、別の記事で詳しく解説しています。
働いていても対象になる
精神疾患では、
「働いているから障害年金は無理だと思っていた」
という方も少なくありません。
しかし実際には、
・障害者雇用で配慮を受けている
・短時間勤務をしている
・休職や退職を繰り返している
・かなり無理をしながら維持している
・環境調整がないと継続できない
というケースもあります。
そのため、「働いている=対象外」というわけではありません。
実際には、
・どれくらい無理をしながら維持しているか
・どれくらい支援や配慮が必要か
・生活全体へどれくらい影響が出ているか
が重要になります。
一方で、働いていれば必ず受給できるというわけでもありません。
精神の障害年金では、
・どのような配慮を受けているか
・どれくらい安定して働けているか
・仕事の内容や負荷
・欠勤や休職の有無
・周囲の支援がどれくらい必要か
などが総合的に確認されます。
また、一定以上の収入があり、安定して就労できている場合は、
・障害状態が軽いと判断される
・等級が下がる
可能性もあります。
特に精神疾患では、「無理をしながら働いている」「強い配慮があってなんとか維持している」というケースも少なくありません。
そのため、働いているかどうかだけではなく、「どのような状態で働いているか」が重要になります。
おわりに
障害年金は、「どれだけつらいか」だけで決まる制度ではなく、日常生活や社会生活への影響を総合的にみて判断されます。
また、
・働いているから対象外
・この診断名だから無理
・もっと重くないともらえない
と思い込んでしまっている方も少なくありません。
実際には、かなり無理をしながら生活や就労を維持しているケースもあります。
診断名だけで諦めるのではなく、
「今、どのような困りごとがあり、生活へどれくらい影響が出ているのか」
を整理していくことが大切です。
当院の医療相談でも、
・障害年金の対象になるのか分からない
・初診日がどこになるか不安
・働いているけれど申請できるのか知りたい
・手帳との違いが分からない
といったご相談をお受けしています。
制度だけで判断するのではなく、現在の生活状況や困りごとを一緒に整理しながら考えていくことが大切です。
障害年金の等級ごとの違いや、「3級はどのくらいの状態なのか」については、別の記事で詳しく解説しています。
また、「20歳より前から生きづらさが続いていた」「学生時代から通院していた」
という方に関係する、"20歳前傷病の障害年金"については次回ご説明します。
予告
次回は障害年金の3回目です。20歳前傷病の障害年金について解説します。ご期待ください。
